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≪ラ・カンパネラ基礎知識≫


■「鐘」の主題による華麗なる大幻想曲

・作曲者/フランツ・リスト   ・作品番号/S.420 or R.231
・原曲/ヴァイオリン協奏曲 第2番 ロ短調 第3楽章op.7(パガニーニ)
・超絶度/800  ・演奏時間/約20分


≪(伊)Grande Fantaisie de Bravoure sur La Clochette de Paganini≫
≪(英)Large Bravura Fantasy on Paganini's“La Campanella”≫


パガニーニによる「ラ・カンパネラ」の主題による華麗なる大幻想曲 [※MIDI] *未完成*


最初に作られたラ・カンパネラ(1834年の作品)であり、3つのうち最も演奏困難な曲です。
ブゾーニは「この曲は怪物だ」という言葉を残しています。

ときに≪ラ・カンパネラの主題によるヴラヴーラ大幻想曲≫と訳されることもありますが、同じもの(=意味)です。 「Clochette:クロシェット」は“鈴”、「Bravura:ヴラヴーラ」はイタリア語で、“華麗な”の意味です。 それは、演奏が終わった後に興奮した観客が叫ぶ言葉で、 世界共通の最高の称賛「Bravo:ヴラボー」が語源です。 決して「ぶらぶらしてる」という意味ではありません(;´д`)ノ(笑)

原曲はニコロ・パガニーニ ヴァイオリン協奏曲第2番ロ短調op.7 第3楽章『ラ・カンパネラ』 [※MIDI] です。 フランツ・リストが20歳の頃、ウィーンにてパガニーニの魔神的な演奏を見て衝撃を受け、 「自分は、ピアノのパガニーニになるんだ!」と誓って超絶技巧の世界にのめり込み、 “パガニーニのヴァイオリン技巧”を真似て、ピアノ演奏に置き換えて表現しようとした一番最初の作品です。

すでに、15歳という若さで現在の『超絶技巧練習曲集』の原曲『12の練習曲』を作曲していたリストでしたが、20歳になってこのパガニーニに出会うことにより、本格的に“超絶技巧の魅力”に目覚め…いや、超絶技巧の世界にとり憑かれたとでもいいましょうか…の後、最初に作った記念すべき真・超絶技巧作品こそ、この≪パガニーニの「ラカンパネラ」の主題による華麗なる大幻想曲op.2≫なわけです。

正式名称が長すぎるので、勝手にわたしは省略して真鐘と呼んでいます。 なぜなら、この曲は真のラ・カンパネラと言っても過言ではないからです。 この作品はピアノで普通に演奏すると17分もかかるまさに大幻想曲! 「連邦のモビルスーツは化け物か!!」と言わんばかりの超絶度をほこる超絶中の超絶!! 何を言いたいのかといいますと、まず、通常の人間には演奏が不可能だということです。 現時点において、これを弾けるピアニストは世界でもわずか数人しかいません。 私が知ってるのはレスリー・ハワード、セルジオ・フィオレンティーノ、ジョン・オグドンだけです。

※レスリー・ハワードが弾いた「鐘の主題による華麗なる大幻想曲」が収録されているCD。
Disk1の1曲目『Grande Fantaisie di bravura sur La Clochette de Paganini S420 (c1832)』がそれ。


通常のラ・カンパネラでヒ〜こらヒ〜こら言ってる人へ。 あなたが今練習しているラ・カンパネラ(=パガ大嬰ト短調)の[超絶度]を100とした場合、 たぶんこのラ・カンパネラは私が思うに800はあります。 例えば超絶技巧練習曲集の第5番≪鬼火≫は、いろんなピアニストがスラスラ?弾いてCD出してますが、 前述にあるように、この曲はたったの3人しかCDを出してないのです。ちなみに、それらの3つのCDさえ手に入れるのは困難です。

しかしこのラカンパネラもまた、「指と楽譜と情熱あれば、弾けぬ曲など存在しない」を掲げるわたくしショパン三世としては、 さけては通れないモノです。いづれは弾こう弾こうと思いつつも、 「せっかくここまで自信過剰&プラス思考になってくれた精神がすべて壊れてしまうのでは?」という恐怖感から、楽譜はあまり見ないようにしていました。 ところが最近、パガ超ラカンパネラを習得したことにより、さらなる自信と技巧を身につけたつもりです。 この曲をMIDI化するにあたり、やっとこの楽譜と正面から向き合えるようになったのでした。 図らずも細かい部分まで目を通すようになり、おかげで気づいたことがいくつかあります。

まず、この楽譜は大きく4つに分けることができます。

です。大幻想曲という名からも想像が付くように、 ドーバーの楽譜で30ページあり、 演奏には最低でも約17分もかかる曲なので、テンポの遅すぎる「序奏」だけで飽きてしまい、 最後まできちんと集中して聴いたことのない人がほとんどだと思いますが、 そんな人には上のように4つに分けて聴くことをオススメします。 3楽章で構成されているピアノ・ソナタのように聴くのです(例外もある⇒4楽章or5楽章etc.)。


このラカンパネラは、“もっとも弾きにくい調”とされるイ短調(白鍵中心の調)で作られています。
だけど「テーマ」は、もっとも馴染みの深い音型をしていました。

  ― パガ超ラカンパネラ ―

あたりまえのことかもしれませんが完全な一致ではないにしろ、この「真鐘」は「超鐘」と似ている音型が数多く存在しており、 もしもそこを弾こうとするならば、その指をそのまま相対的に上げて弾いてやればよいのです。

ピアノを弾く人がMIDIが作れるようになると、イイ事がたくさんあります。非常に便利です。 たとえ音源(CDやMD)が無かろうが、楽譜があるだけで音源を聴ける(=作れる)ようになるので、もはや演奏の手本となるCDを必要としません。 “MIDIを作ること自体”がすでに譜読みに近いものがあり、それを再生することは譜読みの間違いを見つけることにもなるし、 「“どのあたり”に“どのような音型”が“どれくらい”出てくるのか」を、弾く前にあらかじめ知っておくことができるので、 事前の「顔合わせ」が功を奏し、初対面で遭ってビックリする(orショックを受ける)のを防いでくれるのです。

わたしはなんだか、このラカンパネラを弾けるような気がしてきました…。(⇒問題発言




≪ 細心の注意をもって開かねばならない ≫


初心者がうかつにその楽譜を見ようものなら、
眩暈と吐き気に襲われる危険性があり、下手をすると心に深い傷が残る。
まず難易度は、超絶技巧練習曲第4番「マゼッパ」の約10倍と考えて良い。

それは、世界でわずか数人しか録音していないという事実からも容易に想像が付く。

大量の細かい音符で半音階的に真っ黒に埋め尽くされているため、
ただ単純に楽譜を読み取るだけでも長い時間を必要とする。
もはや“その作業”は「譜読み」ではなく、「解読」であり、
軽い気持ちでMIDIを作ろうとすると、大火傷を負う。

聴衆に身震いを惹き起こすほどの華麗なるトレモロは、
もはや、片手で弾くのを許されておらず、
“両手によるユニゾン”を強制する。

それが、フランツ・リストのop.2である


―ショパン三世―





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